製造の流れと品種
ハム、ベーコンは、豚肉の保存方法として開発されたものである。
日本では1872年(明治5)、長崎の片岡伊右衛門がアメリカ人からハムの製造法を学んだ記録があり、1874年(明治7)からは、イギリス人ウイリアム・カーチスが神奈川県鎌倉郡でハムの製造、販売を始め、日本に普及、定着するようになった。
ハムの製造法は、原料の豚肉を整形後、食塩、砂糖、香辛料、発色剤などを合わせた塩漬剤とともにつけ込み、冷蔵庫で熟成し、骨つきハム以外は、ケーシングに詰め以下の工程を経てつくる。
現在の製品は、63℃で30分以上の条件で加熱処理するものと、20℃以下の低温で乾燥、熟成するものに大別できる。前者の代表的なものはロースハムである。
ハム(ham)は英語で豚のもも肉を意味し、本来豚のもも肉からつくる。
それ以外の部位のものもハムとよぶのは日本の特徴である。
ベーコンは、豚のばら肉でつくったものをさすことが多いが、日本では、ロース肉、肩肉を用いたベーコンもある。
ベーコンの製造では、食塩、砂糖、香辛料、発色剤などを合わせた塩漬剤とともに冷蔵庫内でつけ込んだ後、燻煙を行う。
ハムおよびベーコンは、JAS(日本農林規格)や食品衛生法により、材料および製造法を厳しく規制されている。
- ・塩漬【えんせき】
- 食塩と発色剤(亜硝酸ナトリュム、硝酸カリュウム、硝酸ナトリュウム)からなる基本塩漬剤を、原料肉に加え、冷蔵して熟成風味をつける行程をいう。基本塩漬剤のほかに砂糖、香辛料などを加えることがある。
塩漬方法には、以下の3つがある。 - ①乾塩漬法
- 原料肉の表面に塩漬剤をまぶし内部に浸透させる。
- ②湿塩漬法
- 塩漬剤を溶かした液に原料肉を漬け込む。
- ③ピックル(塩漬液)注入法
- 肉塊に塩漬液を注入する。塩漬期間の短縮、製品の質の均一化などのメリットがある。添加物として砂糖、香辛料、調味料、酸化防止剤、動物性たんぱく質などを溶かして加えることがある。
- ・燻煙
- サクラ、ヒッコリーなどの木材を燻(いぶ)すことで、煙の成分が製品の表面に付着し、それによって製品は赤褐色となり、防腐成分がつき保存性が高まるとともに、食欲をそそる風味づけができる。また、脂肪の酸化も抑制される。
燻煙方法は食肉製品の場合は16~22℃以下を冷勲、30~45℃を温燻、60~90℃を熱燻と区分し、目的によって使い分ける。非加熱食肉製品は20℃以下の冷燻、加熱食肉製品は60℃以上の熱燻で行われる。